ブログとじまあす

すみません,書かなかったり書くといって放置したりで(基本的に書かない)
堕落の極みを尽くしていたこのブログも,大学院を修了したこのタイミングで,
いちど区切りとして閉じようと思います.

そして,これからはてなブログに移行する形で,下記URL のブログの方に日々の思索など,雑多なことを書こうと思います.
もちろん,お仕事のことは書きませんが.

URL: http://howtogo2983.hatenablog.com/

4月は研修等でしばらく忙しいですが,
今後はこちらでリハビリがてら,ちょこちょこ更新したいとおもいます.
論文のことも,気が向いたらこちらで書きます.

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都市をつくる風景

都市をつくる風景

風景とローカル・ガバナンス:春の小川はなぜ失われたのか

風景とローカル・ガバナンス:春の小川はなぜ失われたのか

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人口減少時代における土地利用計画―都市周辺部の持続可能性を探る

人口減少時代における土地利用計画―都市周辺部の持続可能性を探る

復刻版 日本の広場

復刻版 日本の広場

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クマゼミよりアブラゼミのほうが鳴き声がつややかで、上品に感じられて良い。

さて、論文の進捗ですが、いままで全然手ごたえがなかったものが、だんだんと感じるようになってきました。それにしても進行はただでさえおそいので、この夏休みでどれだけがんばれるが勝負です。

田舎でも都会でもないまち、アンカーポイントのない、死にゆくエリアをどこまで秩序立てることが出来るか。
基本的には、公共施設や避難所を中心とした空地ベルトの保全と展開→防災・景観計画から縮退の時代における土地利用の総合的な計画へ、というストーリーになるとは思うが、どこまでわかりやすく研究として描けるか。タブーに挑戦している気持ちでがんばりたいと思います。コールハースの指摘するように、都市の図と地をひっくりかえせるか。まだ頭の中ではアイデアがバラバラでつながっていないので、詳細はいずれ書くことができればと思います。
妄想はさておき、出せる、出そう!と言われている景デに論文を提出できるだろうか、果たして、本当にきわどいところではある。

相手への興味を失うこと

どれだけ意見や議論、アドバイスをしても思考停止して自分で消化せず、結果的に言うことを全く聞かなかった、議論などなかった、としてしまう人は少なからずいる(挙句の果てに先輩にたいして面倒をみてもらえなかった、と不満を漏らす人までいる)ので、そういう礼儀に欠けた人はあまり相手にせず関心を失う術をこちらが努力して持つ方がなんというか手っ取り早い。

去年までそれが出来ずになかなか苦労した。なぜ話を聞いてくれないんだ、こいつらはバカか、なぜわかりあえないなんだと。だが去年の苦労のおかげで、そんなことはさっさとあきらめてヘラヘラしてそうだねーがんばってねーとテキトーにほざいていることのほうが、まだ精神的にもマシだし時間も短縮できるといまさら気づいた。バカはわたしだった。まだまだぎこちないが、これからは訓練してその仮面を身につけたいと思う。礼儀を払って、ちゃんと議論してくれる先輩後輩に議論してもらえればそれでよい。つーかそれがよい。興味のない人間のことを考えるのはじーさんになってからやればいいや。

しかしながら、ああ、私は一体何者になってしまうんだろう。

「サステイナブルな環境デザイン」シンポジウム

7月5日に、神戸大学大学院工学研究科建築学専攻持続的住環境創成講座主催の「サステイナブルな環境デザイン」シンポジウムが開かれました。
URL:https://www.facebook.com/kobesled/posts/565909226863420

私は一般参加者として拝聴させていただきました。
その日、基調講演時にとったメモをここに公開したいと思います。断片的かつ誤ったことが書いている可能性があり、その上スライドがないため少々理解に難が生じることもあるかと思いますが、それをあらかじめ断っておきます。
参考程度にご覧いただけると幸いです。

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基調講演 Jan Mehnert氏(Transsolar, Germany)

「ドイツのサステイナブルデザイン─気象と環境性能から建築・都市を構想する」

「クライメイト・デザイン
サステイナビリティーを考えていく上で重要となる二点
①ENERGY ②COMFORT

基本的なアプローチ
パッシヴなアプローチ・・・使用するエネルギーを出来るだけ減らす
アクティヴなアプローチ・・・アクティブな自然環境を取り入れる e.g太陽光、風

その際、指標となりえるものは数字、データだけではない
例えば、ソーラーパネルのついた自動車は理想とはいえない


ヴェネチアビエンナーレのプロジェクト
・雲を人口的につくって室内を冷やす
・常に考えていたのはデータとなるもの、エネルギーをどうやって可視化するか
・まずはじめに3つのレイヤーに空気を分けて雲をつくった、それぞれ湿度と温度が違う
・レイヤーをつくるために設備が大掛かりになってしまったが、セットとなるスロープを歩くにつれて性質の異なる空気をそれぞれが体験できる。雲の上に立っているような感覚


2014 ヴェネチアビエンナーレ
・四階建ての建物の中庭インスタレーション
・狭く暗い中庭を太陽光を引き込むしゃ光機、パネル内に気体を通す建材を開発
・日陰や日なた、暖かいところや涼しいところ、風のあるところやないところをつくって(デザインはそれに従属する)訪問者にクライメイトの違いと好みを体験してもらう

このように、気温や湿度だけで環境をはかるのではなく、建物の輻射熱や風の流れなど、可能な限り細かくリサーチを行い、複雑な状況を理解し、エネルギーを可視化していく

中央パリの広場のリノベーションプロジェクト
御影石を白いコンクリートにかえる(輻射熱を除く)
・余計な構造物を除く(風をつくる)
・キャノピー、木々をつくる(日陰をつくる)
・水のあるものをつくる(噴水、水盤)

ここまで行い、最大地表面温度が38度を超える場所がなくなった
実際に利用者が激増、快適な観光を工夫するだけで環境は一変する


その他、ヴィトラのマイクロハウスプロジェクト、レンゾピアノと協同

これらの実践を都市スケールへ拡張していく試み
・高密度な都市はエネルギーの観点ではどうだろうか?建築のエネルギーだけを考えるだけでは物事の本質は見えてこない
・たとえば、クリーンエネルギーな住宅に住んでいても日常的に自動車を利用しているのなら意味が無い
→同様にして、細かくエネルギーの使用量をみていく必要がある


Canada Manitoba Hydro with KPMB Architets
・電気会社の本社ビルのプロジェクト
・70度の寒暖差をいかに縮めるか
・外から取り入れた空気を暖め(冷やし)、循環させる。風の流れやビル風、光量をシミュレーションし、建物のボリュームデザインに反映する
・出来上がった建物を使用しながらも、リサーチを行い調整を重ねていく
現在の使用電力は88kwh/m2 を切るが、これからも減少していく方向へ


UAE Masder マスタープラン with Norman Foster
①パッシブなアプローチ
・厳しい環境下(最大気温45度以上)での都市プロジェクト
・長時間外出できないようなところで(アブダビは隣のビルに車で移動する)環境を取り入れる提案をする
・街路のオリエンテーションを45度に設定、日陰をつくりつつ、地方風が通りやすいように
・建物の配置計画も効率よく日陰が出来るように。緑のコリドーをつくり、風の通り道を作る
・砂漠の地表面温度は67度、アブダビは71度、masderは40度(緑地をつくることができれば38度)まで下げることが出来る。中東では快適な環境と位置づけられる

②アクティブなアプローチ
自然エネルギーを取り入れて、再生利用 e.g. 風力、水力、太陽光・・・




基調講演2 Leonard Ng氏(Atelier Dreiseitl Singapore代表)

『アジアのサステイナブル・シティ ―水循環から発想する都市環境デザイン』

「自然ときりはなされた現代社会、われわれはまるで養鶏場にぎゅうぎゅう詰めになっている鶏である」

5大グローバルトレンド
・人口動態の変化
・都市化(スプロール)
・気候変動(温暖化、異常気象)
・自然資源の枯渇
グローバル化

親水空間におけるコンセンサスや地域性の理解をいかに成し遂げるか
・視覚的、建築的
・環境に配慮したインフラ網
・エネルギー、資源の管理
・土地の記憶、文化的価値

→これらの傾向に、ランドスケープアーキテクトとしてリアクションしなくてはならない



設計活動の拠点のひとつであるシンガポールでは、洪水の被害が国中を脅かしている
既存のインフラでは対応しきれない、雨水のピークフロウを減らす、ゆっくり河川へ

解決していく際に、環境技術を活用するだけではなく、市民にたいして認知度を上げるデザイン
例:水が流れる階段のPJ(ドイツ)、雨が降った後に水溜り(遊び場)ができる公園PJ(中国)
「たとえば、東京の渋谷川は、大勢の人は見向きもしませんが、ここでなにができるでしょう?」
環境はシステムで捉える。システムで捉えるということは、必然的に都市スケールで捉えることになる


Sensitive Climate Landscape Design
ドイツ ニュルンベルク 環境調整住宅
・建築を雨水で冷やす、空気の流れもつくる、防火にも使用→水は浄化、循環→再び流して冷やす→あまった分は排水、オープンなシステムをつくる、水が建物を冷やしていること可視化する


アブダビ ザイード美術館 フォスターと協働
・特異な形態の建築のファサードは特殊なポリマーを使用、海からくる空気中の水分をかき集める
・トイレや水系施設に利用し、水が貴重なアブダビで豊かな環境をつくる


Healing the Land 土地の治療
都市計画のプロジェクト
・集水域をリスペクトしたブロック割り
・土壌汚染にたいして水循環による回復のスキームを考える
・70%の表面排水を地域に流す、20年単位の植物遷移のスキーム


順応と強化
シンガポールのマスタープラン
・オリジナルのマスタープランは道路計画が最優先事項
・わざと道路を切断したり、行き止まりをつくり緑地を計画
・オープンスペースは貯留容量を設定して配置する、貯留施設も質の高いデザイン、人を呼び認知させる
・結果的に緑地エリアと同じピークフロウを達成できた
・コストは15%大きくなったが、戦略的あたらしい価値基準をデータとして考えることで、価値を示す
→評価基準はいくらでも転倒できる


レジリエントなデザイン
・水が貴重かつ洪水が起こりやすいシンガポールでは現状の雨の流れ方を改善することが目下の課題
・理想的なのは、それぞれの敷地で貯留、浄化を行いゆっくりと流すことが重要


Kallang Park(2008) 動画URL: http://vimeo.com/48729331
・従前の災害リスク、アメニティーの低い河川が住宅エリアの緑地の分断
・河川断面を変更し、川の自然を元に戻すことがコンセプト
・河川と住宅の分節的な運営管理を見直し、シェアしていくような考え方
・政府はもちろん難色を示したが、部分的につくって実証した
・バイオエンジニアリングの技術を勉強し、フル活用した挑戦的なプロジェクト
・河川沿いの不動産価値は大きく上がり、色々な行政地区からおなじような依頼を受けることになった
・河川の飛び石も照明やサインなどの工夫で行政を説得、同じく評判になる
・洪水も密にシミュレートし、従前よりも安全な環境に


浄化ビオトープを利用した河川プロジェクト
・溶岩質の砂、バクテリアなどレイヤーをわけてビオトープの水底をつくる
・従前の河川の三面張りのコンクリートは再利用、河川敷に公園を作る
・飲料水に近い水質を現在は達成している
・20%の生物多様性の向上


繰り返すが、最終的なGOALは環境、だけではなく人の生活も考える。環境技術を活かしながら、できたランドスケープを体験してもらうことで、市民に水の意味、水との付き合いかたを考えてもらう必要がある。デザインの力はそこに注がれる

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以下、感想


Leonard氏の一連の大変興味深い実践は、米国のランドスケープ・アーバニストが職能を獲得してきた運動の結実の一つとも言えるだろう。紹介されたシンガポールのプロジェクトでは、土木エンジニアではなくランドスケープアーキテクト(と名乗る設計者)が前線に立ち、強いコンセプトと技術提案を打ち出してどんどん実現していく。そこに積極的な意味があるのならば、やはりデザインをどう捉えるのかという話に帰結していくように思われる。
Jan氏とLeonard氏の両講演では、単純に環境技術をフル活用するだけではなく水の流れや雲をつくることによってエネルギーを可視化させること、また、その可視化(デザイン)が重要であるというお二人の共通のトピックが見出せた。なによりプロジェクトベースで具体的にお話されていたので大変わかりやすく、目からウロコであった。
つまるところ、パネルディスカッションで技術検討の方法や各主体(行政、プランナー、環境エンジニア)の協働をありかたを掘り下げて議論できればもっと面白くなるかと思ったが、そこは幾分尻すぼみな展開で少々もったいなかったような気がする。

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再発見される風景―ランドスケープが都市をひらく (TN probe)

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風土―人間学的考察 (岩波文庫)

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