情景
いろいろとやばいです。
一つ目の部屋を見に行ったのですが、同席した女性の希望者がいて、彼女がマシンガントークであんぐり。空気と化してました。ああなるほど、こうやってアピールするのだな、と思いました。
なにがやばいって、僕にはマシンガントークが出来ないこと。必死に話を聞いて(しかも要所要所わかんねー)、相槌を打ちながら、質問をひねり出すぐらいしかできない。おかきを持って行ったらおいしいって喜ばれたけど、まあ、微妙ですよね…それに希望者12人って…もう詰んでるかもしれない。彼女と住人が楽しそうにぺちゃくちゃ喋ってる光景が、ぐにゃぐにゃに歪んでみえた。
帰り、彼女とタバコを喫んで、バーゼル駅の近くまでトラムに乗って色々と雑談したけれど、「部屋決まりそうにないわー新しいとこ探すわ」ってぽろっと言っていて、乾いた笑いをしていた僕はとどめを刺されてしまった。ぐふっ。
その後、とぼとぼ深夜のバーゼルを歩いて帰ってくるとホステル前でパリから来たというクソテンション高い黒人にタバコくれとせがまれる。とにかくファッションが好きだと長いこと熱弁され(ヨウジヤマモト、レイカワクボ、イッセイミヤケ、ジュンタカハシ…)、その割にBBキャップ被ってんじゃねーかとツッコミたいのをグッとこらえて部屋に戻る。ハイタッチで手がジンジンする。あと二週間いるらしい。
一番驚いたのは、3ヶ月前にこのホステルに来たときにいた、ジェスチャーでコミュニケーションをとる白メガネの無口なにーちゃんがまだ宿泊していたことだ。エントランスのすみっこで、窓をじっと眺めてた。推測だけど、ぼくが思うに、恐らく彼も部屋をずっと探しているんだと思う。三ヶ月も前から。そして、今日から来た僕と同じ理由で悩んでいる。
ぼくとにーちゃん、ホステルを出るのはどちらが早いだろうか。こんど話しかけてみようと思う。
白眼鏡のにーちゃんも、BBキャップの黒人も、マシンガントークの女性も、彼らの顔が、寝る前の頭の中で渦巻いている。
あなたたちはいったいどこからきて、どこへいくのか。なぜ僕と出会い、話をしているんだろう。
もしかしたらホステルで暮らすほうが楽しいのかも。
いや、部屋をみつけないと。部屋みつけます。明日から頑張ります。